パキスタン「新参謀長」にかかるこれだけの期待

執筆者:緒方麻也2016年12月12日
シャリフ「前」参謀長(右)からバジワ「新」参謀長(左)体制へ(C)AFP=時事

 

 11月29日、情け容赦ない過激派掃討作戦で治安改善を進め、積極的な「軍人外交」で対米関係改善にも貢献したパキスタンのラヒール・シャリフ陸軍参謀長(60)が退任、後任にカマル・ジャベド・バジワ将軍(57)が就任した。新参謀長は正規約62万人、予備役を含めると110万人に達するパキスタン最大の組織のトップに立つ。

 

PKO指揮の経験も

 バジワ新参謀長は1980年に陸軍入隊。カナダ・トロントの国防大学や米国の海軍大学院などを経て歩兵師団司令官、西部バローチスタン兵団長、インドとの係争地帯であるカシミール地方の守備を担当する第10兵団司令官などを歴任したエリート軍人である。2007年からはコンゴでの国連平和維持活動(PKO)にも派遣され、のちにインド陸軍参謀長となるビクラム・シン将軍の下で部隊の指揮に当たった。

 欧米首脳からも信頼されたシャリフ前参謀長に対し、ナワズ・シャリフ首相はたびたび任期延長を打診したが、本人は繰り返しこれを固辞していた。バジワ新参謀長は後任の候補とされた4、5人の将軍たちの中では最若手で、まさにダークホース的な存在だった。圧倒的な存在感を見せた前参謀長に恐れをなしたシャリフ首相が、あえて地味な人材を選んだという見方も出ているほどだ。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。