雑誌の未来

執筆者:成毛眞2016年12月15日

 店内に飲食スペースを設けるコンビニが増えてきた。それだけ場所を要するのだから、当然のことながら割を食うものが出てくる。雑誌はかなり影響を受けるのではないか。
 旧来型のコンビニでは、雑誌は窓側の棚に陳列されていた。すると立ち読みをする人は窓に向かうことになる。それが、コンビニ強盗の抑止になると言われてきた。新しいコンビニではこの位置に、飲食用のカウンターが設けられていることもある。雑誌はというと、隅の方。ひいき目に見ているせいもあるだろうが、与えられたスペースは狭い。こうなってしまうと、雑誌の表紙がコンビニ来店者の目に触れる機会が減り、売上げにも大きな影響が出るだろう。
 コンビニではいい場所を明け渡してしまったが、駅の売店ではいまだ雑誌は特等席を占めている。発売日には「本日発売」という看板を添えてもらえることもある。しかし、電車の中を見てみれば、スマホを読んだり操作したりしている人はいても、雑誌を読んでいる人はほとんどいない。いたと思ったら手にしているのは雑誌ではなくキンドルだったということもある。駅売店のあの特等席が、モバイルバッテリーなどに奪われる日も、そう遠くないのではないか。
 そして雑誌は遅い。週刊誌でも、もっと言えば新聞でも遅い。ネットがこれだけ普及すると、どんなに雑誌などの記者がスクープをとっても、ネットで「一部報道によると」とやられてしまう。オリジナルが紙であったとしても、いち早くスマホでその情報に触れていた人からすれば、24時間遅れで紙に印刷したものが出回っているようにしか感じられない。
 だからこそ雑誌、とりわけ週刊誌は、すべての記事をネットで先に出してしまうべきだろう。じっくり紙で読みたい人には、少し遅れるのを我慢してもらい、別途、印刷してまとめたもの、つまり雑誌を買ってもらう。
 ネットに出せば、SNSでシェアされる。画像はSNSでシェアされやすいので、あっという間に多くの人に届けられる。だから話題にもなり影響力も大きくなる。しかし紙はシェアに向かない。そしてシェアされないものは、ネット上では、もはや存在しないに等しい。目下のところ紙媒体の敵は、「ネットでシェアされやすいもの」なのだ。
 こういったことを書くと、記事をネットでタダで出して、どうやって採算をとるのかと言われるが、それ以前に考えるべきは、数を確保することだ。今や東洋経済オンラインは、毎月2億ページビューをたたき出すお化けサイトに成長したが、基本的に記事はタダだ。しかし圧倒的な数字を持っているので、広告媒体としての力を持ち始めている。他の経済系のメディアが今から東洋経済オンラインと同じことをしようとしても、もう、この差は埋められないだろう。

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