バルセロナ市内のアパートの壁には「民泊反対」のアピールも(筆者撮影、以下同)

 大家は「賃貸をしながら友達を作り」、利用者は「その土地に暮らす人と旅をする」を謳うAirbnb (エアービーアンドビー)。しかしユーロ危機の閉塞感が漂うヨーロッパで、「民泊ブーム」が爆発的にヒットしたのは、シェアの喜びというよりも、むしろ生活費の不足を補う副収入が得られるという経済的な側面が大きかった。
 2013年に英エコノミスト誌から、「シェアリング・エコノミーが生んだ卓越したビジネスモデル」として評価されたAirbnb だったが、市場が拡大するにつれ、2014年に入ると近隣住民とのトラブル、地元の不動産市場への影響、宿泊税の問題、ホテル業界からの反対などで風当たりが強くなっていく。Airbnb の本拠地であるサンフランシスコをはじめ、ニューヨーク、パリ、アムステルダム、ベルリン、ミュンヘンなど、観光客が集まる大都市は、「民泊」規制に向けてそれぞれ人数や日数、地区を制限して近隣住民やホテル業界との「共生」を図る法整備に乗り出すようになった。

記事冒頭の写真のアップ。カタルーニャ語で「民泊を禁止せよ」

 その中でも特に「民泊」をめぐる問題が顕在化し、市当局が厳しい姿勢を見せているのが、現在、私が滞在しているバルセロナである。Airbnb の市場としては、ニューヨーク、ロンドン、パリなどの大都市に次いで利用者は多い。
 バルセロナは1992年のオリンピックを契機に、観光都市として大変貌を遂げた。それ以前は幹線道路が通り、その脇に老朽化した工場やバラックが並んで、海へのアクセスが直接なかった10キロの海岸線を大改造。ゴミ捨て場のようだった海岸を、椰子の木のプロムナードやパエリアのレストランなどが並ぶ地中海のビーチに生まれ変わらせ、街中から地下鉄10分で行けるようにした。長いフランコ圧政から脱し、オリンピックという千載一遇のチャンスに賭けたバルセロナは、地中海の魅力的な都市として世界に向かってアピールすることに大成功した。
 この20年間でバルセロナを訪れる観光客数は5倍に増え、2015年度の観光客数は約900万人だった。しかしその結果、受け入れ態勢が追いつかず、街中をテーマパークのようにウロウロする観光客に対し、人口160万人の市民の目は冷ややかになっている。特に問題なのが、生活空間に観光客が入ってくる「民泊」をめぐるトラブルである。2010年には約9万人だったバルセロナの「民泊」利用者数は、2015年には約20万人となっている。スーツケースを持った観光客が入れ替わり立ち替わり出入りし、定住者がいないというセキュリティー上の不安、パーティーの騒音、ゴミのマナーの悪さなど、数が増えるにつれ観光客と地元住民の摩擦も絶えない。

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