北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)党委員長は元日に今年の基本路線を示す「新年の辞」を発表した。金正恩党委員長は、「大陸間弾道ミサイル(ICBM)の試験発射の準備が最終段階に入った」と述べ、「核武力を中枢とする自衛的国防力と先制攻撃能力を引き続き強化していく」とし、核・ミサイル開発を継続すると表明した。
 南北関係では、朴槿恵(パク・クネ)大統領を呼び捨てにし「反統一的な事大主義的売国勢力」と決め付けた上で、昨年来の韓国での朴槿恵大統領退陣運動を高く評価し「全民族的な統一大進軍を速める」と訴えた。
 一方で金正恩党委員長は演説で人民に頭を下げ、最後の部分で自己批判までする異例の姿勢をみせた。金正恩党委員長の思惑はどこにあるのだろうか。

トランプ氏は「あり得ない」と言及

 金正恩党委員長の「新年の辞」にいち早く反応したのはトランプ次期米大統領だった。トランプ氏は1月2日にツイッターで、北朝鮮が核弾頭を搭載したミサイルで米本土を攻撃する能力を保有する可能性について「そのようなことは起きない(It won’t happen!)」と投稿した。
 トランプ氏のツイッター政治が危ういのは、重要な発言に何の補足説明もないことだ。「そのようなことは起きない」というのが何を意味するのか不明だ。軍事的な手段を動員しても北朝鮮のそうした試みをつぶすつもりなのか、単に北朝鮮の核・ミサイル水準がそのレベルに達していないことを言っているのか、金正恩体制が長続きしないと考えているのか、それとも北朝鮮と交渉してそういう事態を防ぐことなのかが、分からない。
 トランプ氏が北朝鮮の核・ミサイル状況をどの程度理解しているのかも分からない。トランプ氏は、ある種の「モンロー主義」により国際紛争への介入を避けるのではないかとみられており、外交の優先課題は対中関係や中東問題、さらにはロシアとの新たな関係設定になり、北朝鮮核問題は後回しになるのではという見方も多い。
 一方で、ロイター通信はトランプ氏が昨年12月に情報機関に要求して受けた最初の機密情報のブリーフィングは北朝鮮の核問題だったと報じた。そうした情報に接した上での、ツイッター発言だとすれば「そのようなことは起きない」という発言は、トランプ氏が北朝鮮の核問題を優先課題と捉えているようにも見える。文脈的には北朝鮮に強硬姿勢で対応し、そういう事態は許さないというニュアンスを感じる。

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