トランプの「アフリカ政策」を占う

執筆者:白戸圭一2017年2月8日
武装勢力LRAの最高指導者ジョゼフ・コニー(C)EPA=時事

 

 筆者が知る限り、米国のトランプ大統領がアフリカについて発言したことは、選挙期間中も就任後もない。先進諸国の主要メディアや有識者も、トランプ政権の欧州、ロシア、中東、中国、日本、メキシコなどに対する政策については盛んに議論しているが、対アフリカ政策についての議論はほぼ皆無と言って差し支えないだろう。

 21世紀に入ってアフリカ経済が成長軌道に乗ったとはいえ、サブサハラ・アフリカ49カ国のGDP(国内総生産)総額が世界のGDPに占める割合は2%程度に過ぎない。いくら米国が覇権国家だとはいえ、大統領選の過程で対アフリカ政策が話題に上らないことや、新大統領が就任早々アフリカについて何も言及しないこと自体は、それほど不自然なことではない。

 しかし、メディアや有識者が話題にしなくても、歴代の米政権は当然ながら対アフリカ政策を有していたし、その重要性は近年、高まりこそすれ低下することはなかった。

 ブッシュ・ジュニア大統領は2001年の「9.11テロ」を受けて開発途上地域の安定化の重要性を痛感し、任期中にアフリカ向け援助をおよそ4倍に増額した。オバマ大統領は、サブサハラ・アフリカの電力普及率を2018年までに倍にするため70億ドルの経済支援と90億ドル以上の民間投資を約束し、ソマリアを中心とする「アフリカの角」やサハラ砂漠では、特殊部隊と無人機を活用したテロ組織との戦いを続けてきた。

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