映画監督の経験もある黒幕(C)AFP=時事

 

 思想家が政治家を使うのか、政治家が思想家を利用するのか———。

 トランプ大統領の側近にして政権の黒幕スティーブ・バノン首席戦略官兼上級顧問の動きが注目されている。バノンはトランプの選挙戦略を仕切った知謀家だ。当選後真っ先に「首席戦略官」という大統領最側近のポストを与えられた。大統領就任演説の骨格をつくり、メキシコ国境の壁建設、中東移民受け入れ一時禁止など、トランプが次々と署名し物議を醸している大統領令はほとんどがバノンの助言によるという。

 そのバノンが内政・選挙戦略だけでなく、外交・安全保障まで取り仕切りそうな気配だ。最高意志決定機関である国家安全保障会議(NSC)の常任メンバーとして割り込んだ。米軍制服組のトップ統合参謀本部議長や国家情報局長は非常任に格下げされた。異例の人事だ。

 いったいバノンは何を狙っているのか。当面の立ち回りは「経済ナショナリズム」のように見える。自身もそれを触れ込んでいる。政権入りが決まるまでバノンが経営していた右派ニュースサイト『ブライトバート・ニュース』は、いわゆる「オルタナ右翼」(Alternative Right, Alt-Right)の意見表明の場として、人気を得ていた。バノン自身もそのことを認めていたが、オルタナ右翼と距離を置こうとしている様子もうかがえる。

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