中国にとって、北朝鮮を支援する大義は失われつつある。習近平主席の次の手は? (C)AFP=時事

 北朝鮮のことは、本当のところは良く分からない。これまで筆者が担当したことのある中国、米国、ロシア(旧ソ連)、ミャンマーなどは、分析すると自ずと中身が見えてきたものだが、北朝鮮の場合は、それが見えてこないのだ。それだけ情報が限られ、われわれの常識では計り知れない、謎に包まれた国ということなのだろう。北朝鮮が専門の平岩俊司関西学院大学教授は、「北朝鮮が高度の情報統制下にあること、“主体思想”という独特な思想を国家の基本理念としていること」などをその理由に挙げている。

日本にとっての「北朝鮮問題」とは何か

 しかし、日本にとっての北朝鮮問題とは何かについては簡単に分かる。1つは北朝鮮の核問題であり、このことについては後で詳述する。2つ目は北朝鮮、ひいては朝鮮半島の安定の問題である。ここが不安定化すれば、北朝鮮が保有する化学兵器などの大量破壊兵器の拡散問題のみならず、難民や経済問題を引き起こす。3つ目が北朝鮮にテロ実施能力があることは証明済みなので、北朝鮮が不安定化するなど、状況が変われば北朝鮮によるテロ行為を心配する必要がある。そして4つ目に、北朝鮮による日本人拉致問題がある。言語道断の話であり、困難は山ほどあっても、日本政府には彼らを救出する義務がある。
 これらに米、中、韓、露などとの関係がもたらす利害得失を加えて、日本の北朝鮮との関係における「国益」の中身が決まってくる。このように「国益」とは複合的なものであって、その部分の1つが全体を代表することはない。そこでそれぞれに優先順位をつける必要がある。それをやるのが政治の仕事であり、当然のことながら、プロ集団の意見を聞いた後、政治が全体を総合的に判断して決めるのが筋だ。

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