『la kagū』でのトークイベントで語る辣椒氏(中央)。左右が高口氏と阿古氏(筆者撮影、以下同)

 

 新潮社から発売された中国人漫画家・辣椒(ラージャオ、中国語で「唐辛子」を意味するペンネーム。本名は王立銘)の『マンガで読む 嘘つき中国共産党』が売れている。今年1月の発売から増刷を重ね、新潮社によれば、発行部数は2万6000部に達した。この種の中国政治を扱ったものとしては異例のヒットである。売れている理由は、マンガという平易な表現方法で、中国政治の内側を軽妙にわかりやすく語っていることとともに、日本で出版されるいわゆる「反中本」よりも、数段深い読後感を読者に与えるからだ。

 それはとりもなおさず、辣椒の描く共産党批判が、自身の体験に根ざしているところが大きい。多くの反中本の「批判のための批判」「本を売るための批判」ではなく、「愛するがゆえの批判」を展開しているのである。

 また中国で生活し、実際に言論への圧力を体験した者でしか描けない「被喝茶(お茶を飲まされる=当局に呼び出されて尋問される)」などのリアルな当局とのやりとりも見所がある。「抗日神劇」と呼ばれるスーパーリアルの抗日戦争ドラマへの詳しい解説や、農暦(日本の旧暦)の大晦日恒例のテレビイベント「春晩」の裏話なども普段知ることができない一般民衆の世界であり、読み応えがある。

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