大勝利とはいかなかったが、オランダ総選挙の「主役」だった自由党のウィルダース党首(中央)(C)EPA=時事

 欧州の小国オランダの選挙が、これほど国際的注目を集めたのは初めてだ。米国発の「トランプ旋風」は欧州でも吹き荒れるのか。その試金石となった。ヘルト・ウィルダース党首が率いる極右「自由党(PVV)」は第2党にとどまったが、終始選挙戦の主役だった。はっきりしたのは、「ポピュリズム(大衆迎合主義)か否か」が政治の新機軸となったことだ。左右両翼が政権を争った欧州政治は崩壊に向かっている。

ポピュリズムは止めたが……

 マルク・ルッテ首相は「オランダが“誤ったポピュリズム”を止めた」と大喜びだった。自身が率いる中道右派の自由民主党(VVD)が首位となり、「英国の欧州連合(EU)離脱、トランプ米政権の誕生」という悪い流れを断ち切ったというのだ。とはいえVVDは議席を41から33に大きく減らし、信任を得たとは言い難い。ルッテ首相には、ポピュリズムのドミノを止めるのが唯一の目標になっていたのだ。
 オランダ政治は戦後、VVDとキリスト教民主勢力、中道左派・労働党の3大政党が「親EU・民主主義」の枠を作ってきた。1998年の総選挙では、定数150のうち3大政党の合計は112議席にのぼった。それが徐々に減り、今回は計61。過半数にも届かない。特に労働党は退潮が著しい。2012年総選挙で獲得した38議席は9議席に減り、少数政党に転落した。極右勝利を回避したとはいえ、米英両国と同様、エスタブリッシュメント(支配階層)への反乱が起きているのは明らかだ。
 アムステルダム大のハイス・シューマッハー准教授は「今回はPVVか、反PVVかを問う選挙だった」とした上で、「連立交渉はPVV抜きで進むが、小党連立の不安定政権になるだろう。各党はアンチPVVだけが共通点だった」と指摘する。ルッテ首相の続投には、少なくとも4党の連立が必要だ。

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