3月10日、南スーダンのPKOに派遣した陸上自衛隊部隊を撤収させる方針を発表する安倍晋三首相 (c)時事

 それはあまりにも唐突に見えた。3月10日夕方の、安倍総理による南スーダンPKO(国連平和維持活動)撤収発表だ。

 しかも、総理はその後国会で、撤収については昨年9月から検討を始めていた、と答弁した。筆者は、防衛省関係者から現場の自衛隊の焦燥感ゆえのこの動きを感じ取っていたが、静かな怒りを覚えた。9月から撤収の検討を始めたのなら、なぜ、11月に交代の部隊を出発させたのか。そしてなぜ、その部隊をわずか半年で撤収させるのか。政府は単に、「駆けつけ警護」という新任務を付与した部隊を派遣した、という実績だけを作りたかっただけではないのか――そう思えてならないのだ。

 一方で“護憲派”の人たちが、自衛隊の撤収決定を「自衛隊員の命が守られた」などと歓迎するさまを見聞きするにつけ、政府に対するものとは違う種類の怒りを感じる。

 そもそもPKOは、内戦や部族対立などの理由から、本来現地政府がやるべき「住民の保護」を代わりに行うのが任務だ。つまり現地住民に「平和」をもたらすために存在するわけである。ところが“護憲派”の人たちは、今回の撤収で自衛隊が「交戦」に巻き込まれないことこそが「平和」だと言っているに等しい。自衛隊が、日本が平和であれば、南スーダン住民の「平和」などどうでもいいことなのだろうか。他国のPKF(平和維持軍)はまだ活動を続けているのだが。

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