社会保障費の「歪んだ圧縮」が止まらない

執筆者:吉田啓志2008年6月号

社会保障費の膨張を抑制する必要があることは論を俟たない。だが、常に土壇場で“圧力”に屈する厚生労働省に任せていては……。「これは厚生労働省による騙し討ちだ。何が勤務医対策だ。五分ルールにより、うちの病院は年間数千万円の減収になる。それでどうやって医師を増やせというのか」 四月上旬、福岡市内の中規模病院に勤務する内科医(四二)は、二〇〇八年度の診療報酬改定で導入された、外来管理加算の「五分ルール」への不満を筆者に対しぶちまけた。 医師に支払われる診療報酬のうち、傷の縫合といった外来患者への「処置」やリハビリなど目に見える治療をせず、問診や指導などをした場合、再診料に上乗せできるのが外来管理加算(五百二十円)である。お金になる「処置」の機会が少ない内科医を救済する制度という側面もあるが、患者にすれば「治療を受けていないのに料金を取られた」との思いを抱きやすい。 そこに目をつけた厚労省は「医療費の透明化」を名目に、四月から問診や指導などに「概ね五分」を費やさないと外来管理加算を請求できない仕組みに改めた。一人に五分をかける以上、医師が一時間に診察できる患者は最大十二人。それを超えて診ていれば行政監査対象にもなる。医療費抑制効果の大きい「患者の総枠規制」もできる点がミソで、厚労省は五分ルール導入によって医療給付費を数百億円削減する意向だ。

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