3月27日、モスクワの反腐敗デモで拘束後、出廷した「プーチンが最も恐れる」反政府指導者アレクセイ・ナバリヌイ氏 (C)AFP=時事

 ロシアの80以上の主要都市で3月26日に起きた同時発生的な反腐敗デモは、若者を中心に計数万人が参加。呼び掛けた反政府指導者アレクセイ・ナバリヌイ氏をはじめ1000人以上が一時拘束された。2011年末の与党による選挙不正に抗議した反プーチン・デモ以来最大規模の反政府運動となり、長引くプーチン時代への閉塞感や現状への不満が背後にありそうだ。今回の反政府デモは、「プーチン時代の安定や一定の繁栄の恩恵を受けてきたプーチンの子供たち」(評論家のグレブ・パブロフスキー氏)が反旗を翻したことに特徴がある。これによってプーチン体制が揺らぐ気配はないが、来年3月11日の大統領選に向けてロシア内政が微妙な展開をたどるのは間違いない。

大型ヨット、ワイナリーも

 デモの発端は、ナバリヌイ氏が率いる反政府組織「反腐敗基金」が3月2日ネット上で公開したメドベージェフ首相の腐敗を告発する動画。約50分の動画は、同首相が賄賂で莫大な財産を得たとする内容で、ナバリヌイ氏がナレーターを務め、「基金」が独自に集めた内容を13の章に分けて編集している。
 それによると、メドベージェフ首相はロシア1の大富豪、アリシェル・ウスマノフ氏ら新興財閥から計380億ルーブル(約710億円)の賄賂を「寄付」として集め、モスクワ郊外やサンクトペテルブルク、祖先が住んだクルスク州、南部のアナパなどに広大な豪邸や別荘、ワイナリー、大型ヨットを保有。他人名義ながら、大学時代の友人や側近らが運営する複数の慈善財団に運営させているという。動画は、首相が3カ月間に73枚のTシャツ、20足のスニーカーを財団名義でオンラインで購入したとし、それらを着ている写真を面白おかしく公表。1カ月足らずで1500万回以上の視聴回数という人気動画となった。
 ナバリヌイ氏は動画で、「ロシアのナンバー2であるメドベージェフ首相が腐敗した慈善団体のネットワークを構築し、新興財閥から賄賂を集めて内外の資産を買いあさっている。彼はロシアで最も豊かな人物の1人で、最も腐敗した官僚だ。従来、腐敗した高官は豪奢な生活を隠してきたが、最近は生活がオープンになり、調査が容易になった」とし、26日に腐敗と闘うデモへの結集を呼び掛けた。
 呼び掛けはSNSやフェイスブック(FB)を通じて拡散し、組織化されなくても自然発生的に市民が参集した。参加者は一般市民と見分けがつかず、治安当局は封じ込めに苦慮したという。プーチン時代の反政府デモは、都市部の中間層やトラック運転手などの労働者、それに年金生活者が散発的に実施したが、今回は参加者の大半が25歳以下の若者とされ、全く新しい現象だった。 

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