対立を抱えた米露両国

執筆者:西川恵2008年6月号

 ロシアのプーチン大統領の“引退”を五月七日に控えた四月五、六の両日、同大統領とブッシュ米大統領の最後の会談がロシア南部のソチで行なわれた。 両首脳はこの七年間に二十七回会い、率直に考えを伝える関係を作ってきた。互いに別荘に招くなどウマも合った。初会談はブッシュ大統領が就任して五カ月後の二〇〇一年六月、スロベニアだった。このときブッシュ大統領は「プーチンとは心が通じ合える」と語っている。 現在、両国は米国の欧州でのミサイル防衛(MD)施設建設、北大西洋条約機構(NATO)へのウクライナとグルジアの加盟問題、コソボのセルビアからの独立など、多くの対立を抱えている。ただ米大統領はこれを首脳の個人的関係で補うことで、両国が感情的対立に陥らないよう気を配ってきた面がある。プーチン大統領も同様で、9.11テロの際には、各国首脳の中で真っ先に米大統領に電話した。 二十八回目となる最後の会談は、個人的関係を締めくくるとともに、メドベージェフ次期露大統領を米大統領に引き合わせることで、スムーズな米露首脳関係を引き継がせたいロシア側の狙いがあった。会談場所も二〇一四年に冬季五輪が行なわれるリゾート、ソチが選ばれた。

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