「借金帳消し」という危険な「人気取り政策」

執筆者:緒方麻也2017年4月26日
葉タバコ農家の老女。こうした人々には朗報かもしれないが……(C)AFP=時事

 

 またしてもインド名物ともいえるバラマキ・人気取り政治が頭をもたげてきた。インド最大の2億人を超える人口を擁する北部ウッタルプラデシュ(UP)州。3月開票の議会選で勝利した中央与党・インド人民党(BJP)の州政権は、4月4日に開いた最初の州閣議で選挙公約通り農民の借金を一部帳消しにするという措置を発表した。対象となるのは州の農家2300万戸のうち9割以上に相当する2150万戸で、返済免除額合計は3635億9000万ルピー(約6180億円)に達する。農家1戸当たり最大で10万ルピー(17万円)までの借金を帳消しにするほか、返済不能に陥っている70万人、約563億ルピー(約960億円)分の債務についても銀行に不良債権として処理させる手続きを開始した。

コメからパソコンまで

 これまでにもインドでは選挙のたびにいたるところでバラマキ公約が乱発されてきた。特に地方選挙レベルではこの傾向が顕著だ。州の「2大政党」が長年仁義なき政争を繰り広げてきた南部タミルナドゥ州ではこれまでに、「貧困家庭すべてにカラーテレビを無料提供」や「コメ2キロを無料配布」をはじめ、投票の見返りに飲料水や羊、扇風機などの品物を提供するという、先進国から見たら漫画のような選挙公約が半ば常態化していた。

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