第2次朝鮮戦争勃発のトリガーを、誰も引くはずはないのだが(写真は1950年9月、米軍による仁川上陸作戦)(c)AFP=時事

 

 昨今の米朝関係の緊迫に関する国内の報道を見るにつけ、「国民の生命と財産を守る」と言う観点から考えると、いたずらに不安を煽られているような気がしてならない。それは、「戦略レベル」の問題と「戦術レベル」の問題がごっちゃになった報道が多いからだ。

米・朝・中の「戦略的対話」

「戦術レベル」とは、簡単に言えば、軍の作戦司令官同士の戦いである。自軍の損害を最小限に抑え、敵軍にいかに大きな損害を与えるか。そのためにミサイルや砲弾を撃ち込むという、いわゆる武力衝突による戦闘である。

 一方「戦略レベル」とは、国家元首同士の「戦い」であり、今の極東は、まさにその元首たちによる「戦略的対話」が行われている状況なのだ。トランプ米大統領は北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)党委員長に対して「核開発をやめ、その具体策を習近平中国国家主席と話し合って提示しろ」と迫っており、中国と北朝鮮の両元首にそう考えさせるためにトランプ大統領が使用している道具が、「戦略兵器」である原子力空母カール・ビンソンを中心とした1個空母打撃群なのだ。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。