「共謀罪」と「国連」(上)「人権理事会」とは何か
2017年5月31日
このところ、「国連」と見出しにつくニュースが増えている。しかし、メディアでの報道も、SNSなどでの議論もどこか誤解を含んだものが多く、日本における「国連」幻想というか、「国連」イメージの歪みのようなものを感じる。とりわけ国会で審議中の「共謀罪」法案をめぐり、国連特別報告者のジョセフ・ケナタッチ氏が問題を指摘する書簡を公開し、それに対する日本政府の国連への抗議が大きな話題となっているが、この特別報告者を任命した人権理事会と特別報告者制度をめぐって、様々な議論や誤解が生まれている。
「国際機関の部屋」という名のコラムを任されている以上、こうした状況を看過するわけにはいかない。そこでいくつか議論を整理し、より正確な「国連」理解となる一助としたい。
「人権理事会」のステータス
まずは国連の「人権理事会」という機関について整理しておこう。
国連人権理事会は「理事会」という名称になっているが、安全保障理事会のような法的拘束力はない。同じく理事会としては「経済社会理事会(経社理)」があるが、こちらは国連発足時から理事会として存在し、国連憲章にも書かれている機関である。一方、人権理事会は2006年の総会決議によって、それまで存在していた「人権委員会」を格上げする形で理事会となったものだ(これ以外に「信託統治理事会」があったが、信託統治領であるパラオが独立したことで1994年に機能停止)。
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