安倍首相はグテーレス事務総長(写真)から、特別報告者の声明は「国連の総意ではない」と聞いた、というが……(c)EPA=時事

 ここまでひと通り人権理事会と特別報告者制度について見てきたが、この制度があまり知られていないこともあり、いろいろと誤解が生じているようである。管見の限りだが、見聞きした誤解についてコメントしておきたい。

「共謀罪」調査だけの任命ではない

 ケナタッチ氏が特別報告者に任命されたのは、先に紹介した決議が採択された2015年7月であるが、この時確かに、日本は人権理事会の理事国であった。なお、日本は人権理事会設立の2006年からずっと理事国という説明をする人もいるが、3期連続で理事国にはなれないため、それは間違い。日本は前身の人権委員会は1982年以降ずっとメンバーであったが、人権理事会では2006~2011、2013~2015、2017~2019と断続的であり、連続してメンバーであったわけではない。

 また、すでに述べたように特別報告者は人権理事会で任命されるが、特別報告者は加盟国、地域グループ、国際機関、人権高等弁務官、NGO、一般の個人など誰でも推薦することができ、それらの推薦された候補を選別する諮問委員会が人権高等弁務官の元に設置され、そこで候補者の経験や能力に基づき理事会に提出する候補を絞る。そこでは、おそらく様々な駆け引きがあるだろうが、諮問委員会で絞られた候補が人権理事会へと送られ、そこではその候補を承認するかどうかの判断がなされる。2015年に日本は理事国であったため、任命プロセスに関わったことは間違いないが、日本に独占的な任命権があるわけではなく、47の理事国のうちの1国として選出プロセスに参加したということでしかない。

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