「光」も「影」も見えたWHO事務局長選挙

執筆者:鈴木一人2017年6月5日
WHOの新事務局長に選出されたテドロス氏 (c)AFP=時事

 

 国連における選挙と言えば、事務総長選挙か、安全保障理事会非常任理事国を選ぶ選挙を思い浮かべることが多い。しかし、国連関連機関の事務局長ポストや、様々な委員会などの参加国を選ぶ選挙も多数行われており、候補者を擁立している国のニューヨークやジュネーブ、ウィーンの国連代表部は、しばしば選挙対策事務所のような状況になる。

 5月23日に行われた、ジュネーブに本部を置く世界保健機関(WHO)事務局長選挙は、国際機関における選挙の「光」と「影」を見せた興味深いものであった。

新しい選挙の形

 これまで事務局長を10年務め、重症急性呼吸器症候群(SARS:世界的規模で集団発生した非定型性肺炎の感染症)などの問題に取り組んだ香港出身のマーガレット・チャン(陳馮富珍)が退任し、後継の事務局長を選ぶこととなった。WHOには194の加盟国があり(国連加盟国+ニュージーランドと自由連合を組むクック諸島)、SARSの問題に対処するため例外的に台湾をチャイニーズ・タイペイとしてオブザーバーに迎えている組織でもある(ほとんどの国際機関では、台湾はオブザーバーの資格すら与えられない)。

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