共同研究の打ち合わせで2016年1月にネパールを訪問した時の写真。右から樋口朝霞看護師(医療ガバナンス研究所)、ディピカ・スレスタ看護師、カマドュ・デキシ・デブコタ・トリブバン大学教育病院教授、レポード・クレア公衆衛生学修士(エジンバラ大学)、谷本哲也医師(医療ガバナンス研究所)、津田健司医師(帝京大学)。(筆者提供)

 

 日本の研究レベルの衰退が叫ばれて久しい。

 3月23日には、英科学誌『ネイチャー』が「日本の科学研究は過去10年で失速」という記事を掲載した。

 この記事によれば、この10年間に世界で発表された論文数は約80%増加したのに、日本から発表された論文は14%しか増えなかった。

 トップレベルの論文に限定すれば、状況はさらに酷い。自然科学分野でトップ68の雑誌に掲載された論文数をまとめたネイチャー・インデックスは、2012~2016年の間に英国は17%、中国は48%増加しているのに対し、日本は8%も減少していた。

 世界の科学研究の中で、日本の相対的な地位は着実に低下している。

 この原因として、2004年の国立大学の「独立行政法人化」をきっかけに、現在までに運営費交付金が約1割減額されたことや、科学研究費が大学間での短期的な競争を目指す資金となり、長期的な視点で研究ができなくなったことを挙げる人が多い。そして、多くの有識者が、「日本の基本は科学技術立国だ。国はもっと研究に投資すべきだ」と主張する。

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