表情通り、険しい状況に追い込まれてしまった(C)EPA=時事

 

 6月8日に行われたイギリスの議会総選挙で、メイ首相率いる保守党が単独過半数を獲得できず、今後厳しい政局運営を担うことになった。「ハードBREXIT(強硬EU離脱)」を堅実に実行するために絶対過半数を得て、議会での立場を有利にしようとしたメイ首相の思惑は見事に打ち砕かれた。

 今回の選挙で保守党は330議席から314議席と16も議席を減らした。他方で、予想では選挙後の地盤沈下が危ぶまれた労働党は32増の261議席にまで党勢を回復した。絶対過半数である326議席を単独で維持することができなくなった保守党は、連立政権を模索するしかなくなった。

 趨勢が判明するや、メイ首相は新内閣の組閣に取り掛かる決意を新たにした。「民主統一党(DUP)」の10議席を頼りに与党連立政府を組閣する見通しが噂されているが、労働党には「メイ首相の辞任」を訴える声もあり、BREXITの交渉開始を10日後に控えて、メイ政権そのものの存亡すら危ぶむ悲観論もある。

 もちろん、労働党にも連立を形成する可能性がないわけではないが、その可能性は小さいと見られている。いずれにしても、連立によっても僅差の多数派が形成される不安定政権は免れない。イギリスでは「宙づり内閣(hang parliament)」と揶揄されている。BREXITが落ち着いて、メイ首相の安定した政権運営に安堵しかけていたイギリスのように見えたが、国民は再び問い直したのだ。BREXITに対する不安がくすぶり続けているのは間違いない。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。