憲法改正の「必要性」と「可能性」(下)

執筆者:冨澤暉2017年6月18日
5月3日、憲法改正推進派のフォーラムに向けたビデオメッセージで、改憲について語る安倍晋三自民党総裁 (C)時事

 

「前項の目的を達するために」という、いわゆる「芦田修正」については、本稿(上)の第1項関係の記述の中ですでに述べた。GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)民政局次長チャールズ・ケーディス大佐はじめ占領軍側から「この修正は当然」と認められたのに日本国内で認められなかったのは、「前項の目的を達するために……保持しない」という曖昧な日本語表現のためであり、また後に芦田自身が、「あれは当然自衛権はある、という意味で挿入したものだ。そのことは小委員会の議事録にも自分の日誌にも記録されている」と説明したにもかかわらず、その記録が発見されなかったためでもある。爾来、日本政府もこの芦田修正を「自衛権容認」の証拠として使ったことはない。

 連合軍側がこの芦田修正を認めていたのに、肝心の日本政府が認めないというのは実に面白い話ではある。

明らかなごまかし

「日本の自衛権は自然権だ」という人が時々いるのもおかしな話である。その根拠は、国連憲章第51条の「inherent right」を日本では「固有の権利」と訳すが、国連憲章の仏語文書では「自然権」となっているためのようである。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。