大統領選勝利の日、ナポレオン広場で歓喜に沸く支持者たち(C)EPA=時事

 

 表面的な若さとソフトムードの反面、エマニュエル・マクロン大統領の外交はこれまでの政権と比べて「フランスの自立」を強調している。反ユーロで欧州統合に否定的だった極右「国民戦線」のマリーヌ・ルペンとの対抗関係で、EU(欧州連合)統合推進派の側面が強調されるが、実際のマクロン外交は、国益主義のリアリズム外交だ。すでに死語と思われてきた「フランスの偉大さ」を称揚し、「フランスとヨーロッパの保護」を強調する。

 マクロンはもともと、高等師範学校(人文系の最難関校)に入学したかったといわれる。十代には小説も書いた。文学や哲学に親しみある人文的教養にも優れ、演説や言葉遣いにその片鱗がうかがえる。傾向としては愛国主義的な論調も強く、左派共和主義でありながら強いナショナリズムの傾向を持っている。

 大統領決選投票日の夜の勝利の集会がルーブル宮殿(美術館)前のピラミッド前の「ナポレオン広場」で行われたのは、偶然ではなかった。マクロンは以前からナポレオンについてしばしば言及していたからである。また「百年戦争」の救国の英雄ジャンヌ・ダルクも同様だ。

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