習近平と握手する陳有慶は、人懐こい人柄から「好好先生」とも呼ばれる(筆者提供。劉智鵬『僑通天下 陳有慶傳』中華書局、2012年刊より。以下同)

 

 7月1日、香港は1997年の香港返還(中国では「香港の中国回帰」と呼ぶ)から20年目を迎えると同時に、今年3月の行政長官選挙で初当選を果たした林鄭月娥(キャリー・ラム/1957年生まれ)の政権が発足する日でもある。当日は返還20周年記念と新長官就任を祝う大々的な式典が行われる。習近平主席は6月29日に初めて香港を訪問する。伝えられるところでは、7月1日までの滞在中、一連の式典への参加に加え、香港島繁華街の「湾仔」見学や新界駐屯の人民解放軍部隊視察も日程に組み込まれているとのことだ。習近平主席滞在中、香港の安定と繁栄維持を“実現”しているとして、「一国両制」の成果が華やかに演出されるに違いない。だが「一国両制」が香港住民のアイデンティーに動揺をもたらしていることもまた事実だ。

 習近平政権による政治的締め付け強化が伝えられる一方、それに反発する若者が過激な独立運動を展開するなど、一国両制が孕む政治的矛盾は一層顕在化しつつある。それゆえ我が国では香港返還20周年を前にして、民主化運動と担い手への関心が強い。中には独立を訴える運動家を英雄視するメディアも見受けられる。

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