7月7日に、ハンブルクG20サミットに際して行われた米・露の大統領・外相会談を通じて、米・露・ヨルダン(およびイスラエル)による、シリア南西部での部分停戦に関する合意が発表された。ヨルダンで実質的な協議が行われて合意に至ったこの停戦は7月9日正午発効し、その実際の効果や持続性には大いに懐疑的でいなければならないものの、当面は一定の有効性を保っているようである。

今回の合意で含まれる地域は、シリア南西部の、そもそもの2011年の反政府デモの発端となったデラア県、ドゥルーズ教徒が多く住むスワイダー県、そしてイスラエルにその多くが占領されているゴラン高原を含むクネイトラ県である。ヨルダンやイスラエルとの国境に接したエリアについて、米・露が隣接国と協議して部分停戦が合意されたことになる。

今回の停戦合意の注目すべき点は様々にある。

(1)米露のシリア内戦における協調の、ほぼ最初の成果

米・露関係は、トランプ政権およびトランプ大統領・側近そのもののロシアとの関係が苛烈な政争の対象となっており、透明性や将来の予測可能性が極めて低い(透明性に関しては、スキャンダル追及・防衛の中で、むしろ異例の情報が次々に開示される状況にもなっているが、あくまでも国内の政争の文脈で暴露されるため、その政策的帰結の不透明は一層高まることになる)。米政権内部で、トランプ大統領本人の意思と、ティラーソン国務長官や国務省、あるいは国防総省の意思がどこまで統一されているかも外側からは計り知れないところがあるが、今回の合意は、米露のシリア内戦における協調の、ほぼ最初の成果となった。これがトランプ政権の対露接近政策の確固たる一歩となるか、局地的・例外的な事例に終わるかが、注目される。

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