【ブックハンティング】「ポピュリズム社会」への歴史の警鐘
2017年7月19日
現代政治を語るうえで、「ポピュリズム」はもはや欠かせない用語となった感がある。その手法や理念を体現する典型的なポピュリストとして、米国の大統領ドナルド・トランプ、フランスの右翼「国民戦線」党首マリーヌ・ルペン、英国の欧州連合(EU)離脱を扇動した「連合王国独立党」(UKIP)元党首ナイジェル・ファラージといった政治家が挙げられる点も、コンセンサスが築かれてきた。ただ、言葉の定義や位置づけを巡っては、専門家の間でも依然見解がわかれている。
最近の政治学の研究は、ポピュリズムの危険性に注目する見方と、その可能性を評価する見方とに、次第にわかれてきたようにみえる。
前者の典型例は、この春に邦訳が出たプリンストン大学教授ヤン=ヴェルナー・ミュラーの『ポピュリズムとは何か』(板橋拓己訳、岩波書店)であろう。彼の論理によると、「多元性を否定する」傾向が強いポピュリスト政治家は権威主義的な要素を必然的に持ち、民主社会にとって極めて危険であるという。
後者は、アルゼンチン出身の政治思想家故エルネスト・ラクラウが理論化した。彼は、既存の勢力に対抗する政治結集の手段としてポピュリズムを積極的に評価した。スペインで急速に台頭した左翼勢力「ポデモス」はラクラウ理論を実践に移し、人々を結集する手段としてポピュリズムを利用している。
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