三菱重工業が開発を進める日本初の小型ジェット旅客機「MRJ(ミツビシ・リージョナル・ジェット)」。垂直尾翼用の炭素繊維部品を供給する東レが名古屋市にある三菱重工の航空宇宙関連工場の隣接地に生産拠点の新設を決めたほか、トヨタに続いて富士重工業の事業参画も見込まれるなど、メーカー側の“助走”は着々と進んでいる。 だが、“離陸”するための肝心の売り込みは心もとない状態が続く。海外受注第一号のベトナム航空に対し、経済産業省は航空機専用の貿易保険を新設する厚遇ぶりだった。三菱重工が国内で想定するのは百機程度の受注。全日空がいち早く二十五機購入を表明したが、大橋洋治会長がMRJの政府計画段階で民間審議委員を務めた経緯があり、いわば“出来レース”。日本航空は態度を表明していないが、経営再建中であり、「整備員養成や保守など面倒ばかりの新型機を押し付けられるのは迷惑」(関係者)との本音が漏れる。 採算ラインが遠く霞む中、霞が関界隈でちょっとした噂になったのは、経産省でMRJ開発を後押しする幹部の結婚話。お相手は三菱重工役員の息女だという。事実なら「さすがは三菱」と妙に感心したくなるが、こうした話が取り沙汰されること自体が、政府頼みのMRJプロジェクトを象徴しているともいえる。

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