マネーはマジックか? 高度のテクニックか?

執筆者:野口悠紀雄2017年8月17日
(C)AFP=時事

 

 国は、マネーの発行を独占してきた。そして、そこから巨額の利益を得てきた。これで国の出費を賄うことは、マネーの歴史と同じくらい古くから行われてきた。

 マネーが硬貨(金貨や銀貨)だった時代、その方法は、硬貨の品質を落とすことだった。歴史に記されている最初の改鋳(改悪)は、ギリシャ時代に見られる。ローマ帝国でも、ある時期から、改鋳が頻繁に行われた。その後のヨーロッパでもそうだ。イングランド国王ヘンリー8世による改鋳は有名だ。江戸時代の日本でも行われた。

 そして、紙幣の時代が始まる。中国では10世紀の北宋の時代から紙幣があったが、遅れたヨーロッパでも次第に紙幣が使われるようになった。

 最初は金の預かり証だったし、兌換銀行券だったが、ジョン・ローのシステムやフランス革命後のアッシニア紙幣を経て、不換紙幣が発行されるようになり、次第に金との関係が薄れてくる。また、ナポレオン戦争でポンドの兌換が停止された。その後、アメリカ大陸でも、紙幣が発行されるようになる。

 硬貨の改鋳も不換紙幣の発行も、国の濫費を賄ったり、軍事費を調達するために行われた場合が多い。紙幣を増発すれば、経済が活性化し、国の財政が救われるとされた。確かに、一時的にはそうなった。しかし、結局のところは、乱発されて経済を混乱させた場合が多い。それが革命の原因になったことも少なくない。

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