「首相官邸」(写真)に「内閣府」に「内閣官房」に……その違いは難しい

 

 森友・加計問題で大騒ぎの頃に、「首相官邸」とともに「内閣府」や「内閣官房」という言葉がメディアに頻繁に登場した。しかしこの3つの違いを正しく理解している人は、伝えていたメディア側にもほとんどいなかったのではないか。一般読者や視聴者ならなおさらだ。それもそのはずで、実はこれらの違いがわかる官僚ですら意外と少ないのである。

ゴミ箱のように扱われる「内閣府」

 内閣府は、旧総理府を母体としながら首相の指導力強化を目指した、いわゆる橋本行革(橋本龍太郎が首相時に推進した省庁再編)を機に誕生した。理想を言えば、通常の業務は各省庁が担当し、内閣官房や内閣府は戦略策定や省庁間の総合調整に専念するということになろう。だが理想と現実が異なるのは世の常で、内閣府の業務は肥大化の一途を辿っている。それもマイナスの方向性に。

 縦割り行政の弊害が叫ばれて久しいが、霞が関内部での主導権争いというと、どこの役所が主管するかという前のめりの鍔迫り合いをイメージしがちだ。しかし霞が関には、消極的権限争いも存在する。ありていに言えば、仕事の押し付け合いだ。今はむしろ後者に多くのエネルギーが費やされているかもしれない。

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