「頼清徳」という「最強カード」を切った蔡英文の「苦境」
2017年9月7日
台湾政治に、久々の激震が走った。台湾で「最も次の総統に近い男」とみられてきた頼清徳・台南市長が行政院長(首相に相当)に任命されることになった。現職の林全氏は退任する。この人事は、政権運営の拙さから支持率が3割前後に低迷する蔡英文・民進党政権にとって、大衆人気が高い頼氏を救世主としたい狙いが大きい。次の総統選挙までの中間選挙にあたる、2018年11月の地方選挙に向けた「選挙内閣」の性格も濃厚だ。
「頼神」と呼ばれる男
頼氏は、現在57歳で、台南市長の2期目を務めていたが、任期半ばで市長を辞して台北に乗り込む形だ。「頼神」と異名をとるほど何をやってもうまくやってのけ、ハンサムな容貌と演説のうまさなどカリスマ性は十分。本来、巡り合わせさえ良かったら、蔡英文総統の代わりに2016年の選挙で総統になっていてもおかしくない人材だった。
もちろん本人も野心満々で、蔡氏の「次」を念頭に置きつつ、今回の行政院長ポストを受けたとみられる。人気、実力は折り紙つきだったが、中央での政治経験がなく、政権ナンバー2にあたる行政院長はその意味では格としてもふさわしい。2018年の地方選挙で、最大人口の新北市選挙に出るべきだとの意見も党内にはあったが、本人の意欲が薄かった。
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