中央銀行を巡る思想上の対立

執筆者:野口悠紀雄2017年9月7日
(C)AFP=時事

 

 第13回で述べたように、アメリカでは、中央銀行が2度も挫折している。その後は、第14回で述べたように、フリーバンキングの時代が30年間も続いた。

 ヨーロッパで中央銀行制度が整備されていったまさにその時代に、なぜアメリカはそれと異なる道を選んだのか?

 この背景には、フェデラリスト(連邦派)とリパブリカン(共和派)の政治思想の戦いがある。

 フェデラリストは、初代財務長官となったアレグザンダー・ハミルトンやジョン・アダムスが率いた党派だ。強い陸軍と海軍を持つ国家を目指し、国家財政については、健全な基盤造りを推進した。

 都市の事業者や商人は、国立銀行の設立、製造業への支援、関税による国家財源の確保などを含むフェデラリストの政策を支持した。

 これとは正反対の考えを持つ人々が、1791年にトーマス・ジェファーソンやジェームズ・マディソンらを指導者として結成した党派が、リパブリカン派だ(なお、現在のアメリカ共和党も Republican Party だが、ジェファーソンのリパブリカン派とは、まったくつながりはない)。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。