混同なき「運用」と一貫した「訓練」を

執筆者:冨澤暉2017年9月9日
陸上自衛隊総合火力演習でのひとコマ。どのような運用のためにどんな訓練をすべきか、は重要だ (C)時事

 報道でもよく登場する「防衛計画の大綱」という場合の「防衛計画」とは、「防衛力整備計画」のことであり、「年度防衛計画(年防)」の「防衛計画」とは、現在の「運用計画」のことである。まずそのことから説明したい。

自衛官は何よりも「別表」を重視

 2013年に「国家安全保障戦略」が決定されるまで、日本国に「国家戦略」はなかった。この戦略を決定した閣議決定において、政府は「本決定は(1957年に決定された)国防の基本方針に代わるものとする」としているので、「国防の基本方針」も国家戦略であったという見方があるが、それを認める人は少ない。

 1976年に「51大綱」が決定されて以降、「07大綱」「16大綱」「22大綱」「25大綱」と計5つの「防衛計画の大綱」が作られてきたが、これらは本来「防衛力整備計画の大綱」であり、概ね10年先を見通した上で、当面5年間の「中期防衛力整備計画」を導き出すその背景となるものである。

 だが自衛官たちは、この大綱の本文よりも最後尾につけられた別表を重視してきた。その別表には、人員、部隊、装備などについての「将来目標」の数値が書かれていて、その将来目標は、国が陸海空各自衛隊に概ね約束したもの(即ち予算配分が概定されたもの)とされていたからである。このことは逆に、「大綱」本文を軽いものとした。例えば、本文で「情報」や「サイバー」の重要性を如何に強調したところで、別表にその項目がない限り、「情報」や「サイバー」についての部隊・装備の整備はなかなか実現しないのである。

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