外交の世界を見ていると、その国の国技が何かが分かる。 中国の胡錦濤国家主席が訪日した時は、早稲田大学で福原愛と卓球をプレーした。 米中間の国交正常化への第一歩となった一九七一年の「ピンポン外交」をはじめ、外交の世界で卓球が好まれるのは、スポーツでありながら身体的接触がなく、しかもお互いが協力してラリーを続けるという「友好関係」を演出しやすいからだ。 このように中国が卓球を外交カードとして使えるのは、中国の卓球界が世界の中で圧倒的な強さを誇っているからである。 しかし友好に用いられる舞台裏には、激しい選抜システムがあることを忘れてはならない。 国際卓球連盟が発表した二〇〇八年六月四日現在の世界ランキングでは、男子トップ10のうち上位四人を中国勢が独占。女子に目を転じると、中国が一位から五位までを独占、他にシンガポール三人、香港が二人という状況。日本勢では福原愛がようやく十二位に入っている程度だ。 女子ランキングの中身を見ていくと、さらに驚くべき事実が浮かび上がる。シンガポール、香港の選手たちは中国出身なのだ。つまり、北京五輪を前にして上位十人すべてが中国で育った選手たちによって占められている。

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