バンドゥーラの音色にのせて(4)2011年3月11日午後2時46分――

執筆者:カテリーナ・グジー2017年9月16日
バンドゥーラを知ってもらおうと、野外フェスティバルやレストラン、ショッピングモールなど場所を選ばず、精力的に活動している(筆者提供)

 

 今振り返ると、あのとき夫に「全部やってあげる」と言われていたら、いまだに自分では何もできなかったと思います。

 それでも、レコード会社や音楽配信会社、映画会社やCM会社にイベント会社と、あらゆるところにプロフィールやCDを送るようアドバイスはしてくれました。もちろん、実際に連絡をとって送るのは自分でしたけどね。ただし、まったく返事はなし。私の音楽が否定されたようで、すっかり落ち込んでしまいました。

 すると今度は、「バンドゥーラが珍しすぎるから、どう扱えばいいのか分からないだけだよ。それでも使ってもらえるにはどうしたらいいのか、そこを考えなくちゃいけないね」と助け船を出してくれたのです。あ、そっかあという感じで、なんだか目からうろこが落ちたみたいに、目の前がパーッと開けた気がしました。

 確かに、バンドゥーラは外国の、それも日本にとってはよくよく知られているわけではないウクライナという東欧の民俗楽器だから、馴染みがない。それで閃いて、演奏会やスタジオや屋外などで私がバンドゥーラを弾きながら歌っている映像をいくつも撮って「YouTube」にアップし、同時にホームページも作って自分のプロフィールや演奏会の情報などを載せはじめました。すると、いろんなところから依頼が舞い込むようになってきたのです。夫はその依頼が怪しくないかどうか確認してくれ、時には打ち合わせにも一緒に行ってくれました。厳しい態度を取りながら、実は本当の優しさで私のことを考えてくれていたんだなあと、いまでは最初のころの厳しさを含めて感謝しています。

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