ノラリクラリと融通無碍に、が持ち味(C)EPA=時事

 

 ドイツ総選挙が9月24日に迫っている。さぞかし世界の耳目がドイツに集まるかと思いきや、すでにメディアの関心はドイツにない。結果がメルケル首相の勝利とほぼ決まっているからだ。一時、連立相手の社会民主党(SPD)が政権奪還かと色めき立ったこともあった。同党は、メルケル首相のキリスト教民主同盟(CDU)に肉薄するまで迫ったものの、やがてその勢いも色褪せ、今や支持率23%あたりを低迷する。CDUは37%だ。一体何があったのか。

「連立の中での埋没」

 そもそも、ドイツで政権交代かと世界が色めき立ったのは、3つの理由による。第1は、SPDがマルティン・シュルツという斬新なイメージの無名政治家を首相候補に擁立し、支持が急伸したこと、第2は、未曽有の難民到来に対するメルケル首相の受入れ政策がドイツ国民の反発を買い、CDUが一気に支持率を失ったこと、そして第3が、米国のトランプ政権発足に代表されるポピュリズム台頭のうねりがヨーロッパ全土を覆うのではないかと思われたことだ。無論、ドイツがポピュリスト政権になることはない。しかし、一時は、ヨーロッパがこのままポピュリズムの波に飲み込まれてしまうのではないかと思われた。頼みの綱、メルケル首相までもが退陣するようでは、ヨーロッパは一体どうなるのか、と思われたのだ。

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