連載小説 Δ(デルタ)(26)

執筆者:杉山隆男2017年10月14日
沖縄県・尖閣諸島の魚釣島と北小島、南小島 (C)時事

 

【前回までのあらすじ】

ようやくのことで那覇空港をスクランブル発進した、航空自衛隊の2機のF15。彼らが「センカク」近くで発見したのは、2機の戦闘機だった。中国空軍のスホーイ27。編隊長は万国共通の緊急無線を使い、中国語で何度も退去を呼びかけたが、一切黙殺された。

 

 

     22

 応答なしのスホーイからの答えは、しかしほどなくして返ってきた。突如排気口から炎を噴き出し、スロットル全開で追尾を振り切るように急降下をはじめたのだ。2機をはさむ形で併走するように飛んでいたKNIGHTとJOYのF15も、遅れじと機首を大きく下げて急降下に入る。

 計器パネル中央の姿勢儀は、15がスホーイのうしろに回りこんで水平飛行に戻ったときから、テニスボールを思わせる球体の上下がきれいに白と黒に二分されていた。だが、降下の角度が深くなるにつれて、どんどん白の部分が上の端へと押しやられ、その分、せり上がるようにして黒の領域が球体の大半を占めるようになっていった。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。