テレビ番組のロングインタビューに答えるマクロン大統領 (C)AFP=時事

 

 10月15日、日曜日の午後8時というゴールデンタイムに、エマニュエル・マクロン大統領の1時間15分におよぶインタビューが、仏民放テレビ局『TF1』で放送された。

 長時間のインタビュー番組は、フランス大統領の必須アイテムだ。前任のフランソワ・オランドやニコラ・サルコジがはじめて行ったのは就任から2週間後である。ところが、マクロンのインタビューは、就任5カ月目になってようやくであった。
 歴代とは違うこうした姿勢には、人気取りをする必要はない、いや、むしろ政策を進めるにはメディアと(ひょっとすると国民と)距離を取った方がいいというマクロンのスタンスが表れている。

典型的なエリート

 こうしたマクロンのスタンスは、「傲慢」「国民無視」という批判を生んだ。
 だが、マクロンの「傲慢」は個人の資質というよりも、フランスのエリートに共通する特徴だ。優等生が集まるエリート学校では、自分たちには才能があり努力したから成功したのだ、だから、会社に入ってもいきなり役付きで高給を貰って当たり前だ、と極めてナイーブに考えている。インタビューの中でマクロンは、「フランス国民は成功者に嫉妬している」と繰り返したが、これも典型的なエリートの反応だ。
 中央集権でエリートが大衆を引っ張っていくことが当たり前だったシャルル・ド・ゴール大統領の時代なら、「傲慢」と非難されるようなことはなかっただろう。だが、半世紀後の現在、もはやそういう時代ではない。
 時代の変化はそれだけではない。
 思えばあの5月7日の決戦投票の夜、得票率66.1%で圧勝した仏史上最年少の青年大統領となれば国中で人気が沸騰しても良さそうなものだが、フランス国民は冷めていた。
 歴代の大統領は、グローバリゼーションと新自由主義の発達で拡大した格差の打破を約束し、国民は期待しては裏切られつづけてきた。フランスの競馬新聞に「おしゃべりではなく、結果!」という宣伝文句があったが、まさにそのとおりだ。もはや、言葉だけのポピュリストはゆるされない。
 このような国民の反応を如実に表していたのが、仏世論調査会社「Ipsos」(雑誌『ル・ポワン』掲載)の「政治活動バロメーター」だ。漠然とした支持ではなく、「大統領としてのマクロンの活動についてどう思うか」と問うこの世論調査では、就任直後の5月の段階で、すでに「とても」と「どちらかといえば」をあわせた「良い」は、46%しかなかった(同時期サルコジは64%、オランドは53%だった)。選挙の高スコアは、極右はダメだというフランス人の良識の表明にすぎなかったのである。
 加えて、国防予算の削減を巡ってピエール・ド・ビリエ統合参謀総長が辞任したり、改革に反対する者を「怠け者」呼ばわりしたり、倒産解雇に抗議して直訴しようとした労働者に対し、「騒ぎ立てている」といった失言をしたり、と逆風にも見舞われている。
 労働法改革では、労働組合の反対運動も予想したほどの盛り上がりを見せなかったが、国民がマクロンを信頼しているというわけではない。9月に行われた同じ世論調査では、「良い」は32%に落ちていた。これは6月に行われた総選挙第1回投票のマクロン新党「共和国前進」(LREM)と、友党の中道派「民主運動」(MoDem)の得票率の合計と変わらない。

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