フランスの高級ブランド大手のクリスチャン・ディオールが、映画『氷の微笑』で知られる米女優のシャロン・ストーンさんを使った広告を中国から撤去した。先に開かれたカンヌ映画祭で、ストーンさんが香港のテレビとのインタビューで「中国・四川省の大地震はチベットの人たちを抑えつけた中国の『報い(カルマ)』だ」と発言したことがきっかけだった。一分近い映像はインターネットの投稿サイトを通じて広がり、中国のメディアなどで大きな反発を呼んだ。 新華社などの報道によると、ディオールの中国法人は「不適切な発言で中国国民を傷つけてしまったことを後悔する」というストーンさんの謝罪声明を出し、中国からストーンさんを使った高級化粧品などの広告をなくすことで事態の収拾を図った。同社を始めフランス企業がチベット問題に敏感なのは、四月にパリで五輪聖火リレーへの抗議が起きたのを受け、中国国内に出店する仏流通大手カルフールなどに対し不買運動が広がったことが背景にある。 しかも、ディオールは、日本を除いてもアジア市場が今や売り上げ全体の二割近くを占める。中国の高級品市場は二〇一五年に百十億ドル(約一兆一千億円)を超え世界の約三割を占めるという、会計事務所アーンスト・アンド・ヤングの推計もある。米国が伸び悩む一方で中国では売り上げが二ケタのペースで伸びており、ブランド企業は重点市場に位置付けている。

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