自民党の宮沢洋一税制調査会会長。「法人税引き下げ」策は、思い描く結果を生むのだろうか(C)時事

 

 自民党の税制改正論議が始まった。党の税制調査会(宮沢洋一会長)の「インナー」と呼ばれる幹部による非公式会議が本格的に動き出し、2018年度の税制改正大綱として12月14日をメドに決定することを確認した。

 

 最大の焦点が法人税。安倍晋三首相は「3%の賃上げを期待する」と企業に呼びかけているが、これを後押しする税制改正を検討する。具体的には、2017年度末に期限が切れる「所得拡大促進税制」の拡充・延長を行う方針。賃上げした企業に対して法人税を優遇することで、賃上げを促進するというのが狙いだ。

 現在の所得拡大促進税制では、大企業の場合、2%以上の賃上げを条件に給与支給額の増加分の一部を法人税から差し引くことができる仕組みになっている。今回の改正では、これを一歩進めて、条件を3%以上の賃上げに引き上げる一方で、税額控除できる割合を拡大する案が浮上している。

400兆円を超えた「内部留保」

 安倍首相は2014年の年頭から「経済好循環」を打ち出し、アベノミクスによる企業収益の好転を、社員の給与に反映させるよう企業経営者に求め続けてきた。春闘では2014年以降2017年まで4年連続でベースアップが実現したが、大企業が中心で、一般には賃金上昇の実感が乏しいとされている。また統計でも実質賃金はなかなか上昇していない。

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