技能実習「新法」でも変わらぬ「利権構造」

執筆者:出井康博2017年11月16日
制度の「円滑な推進」を目的として成立した「国際研修協力機構」だが…… (HPより)

 

 11月1日、「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」(技能実習法)が施行した。新法施行を報じた大手メディアには、「外国人技能実習 厳正化へ」(10月31日『朝日新聞』朝刊)、「外国人技能実習 適正実施法が施行、人権侵害に罰則」(11月1日『日本経済新聞』電子版)といったように、法律の名称に沿った見出しが並んだ。まるで新法が実習制度の適正化を目指してつくられたような報じぶりだが、目的は別のところにある。「技能実習の適正な実施」や「実習生の保護」を前面に押し出しつつ、制度の枠を広げようとしているのだ。

 これまで「最長3年」に限られた実習生の就労期間は「5年」に延長され、加えて介護職での実習生の受け入れも可能となる。日本人の働き手が集まらず、実習生頼みになっている職種は多い。今年6月末時点で過去最高の25万1721人まで膨らんでいる実習生の数は今後、飛躍的に増えていく可能性がある。

つきまとう「失踪」

 実習制度の欺瞞については、この連載でも何度か触れてきた。「技能移転」や「人材育成」といった趣旨は、全くの建前に過ぎない。今もって政府は、実習制度は「人手不足解消の手段ではない」との立場だが、実際には入国が禁じられた外国人の「単純労働者」を合法的に受け入れ、低賃金・重労働の担い手を確保するために用いられている。実習生の受け入れが認められた77の職種では例外なく人手不足に陥っていて、しかも大した技能など必要とされない。「母国でやっていた同じ仕事に日本で就き、帰国後は復職する」という規則もほとんど守られていない。今回新たに認められた「介護」の仕事にしろ、実習生を送り出すアジアの途上国では普及すらしていないのだ。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。