今年1月、賀詞交換会後、記者の取材に応じる志賀重範東芝前会長。原発を建設していた米サウスカロライナ州の地元紙では、「悪い奴ら」の1人として名前が挙がっている (C)時事

 

 「米フリーポートのLNG(液化天然ガス)事業(買い手を見つけられないと東芝に最大9000億円の損失リスクがある)以外に、この先、東芝の経営で考えられるリスクは何ですか」。11月9日、2017年9月期の決算発表で、記者からこう聞かれた東芝の平田政善専務は、晴れ晴れとした笑顔でこう答えた。

 「リスクですか。これといって思い当たりませんねえ」

 平田につられて笑う記者もいた。

 平田の笑顔の理由は10日後に明らかになる。東芝は11月19日、「6000億円の第3者割当増資を実施する」と発表した。旧村上ファンド出身者が設立した投資ファンド「エフィッシモ・キャピタル・マネージメント」など海外の投資家が引き受ける。これで東芝メモリが期日までに売却できなくても、2018年3月末時点での債務超過を解消でき、上場廃止を免れることができる。

 東芝はテレビ事業を129億円で中国のハイセンスグループに売却することも決めた。パソコン事業も手放す方向で協議中と報じられている。すでに白物家電、メディカル事業は売却済み。売れる事業は全部売り、万策尽きかけたところで一発逆転の資金調達である。平田にすれば、笑みの1つも漏れるというものだ。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。