ようやく大連立の協議に入ったが、メルケル首相は「さらに左」を目指すという(C)AFP=時事

 

 今回は、「中道右派の右」ということについて考えてみたい。

 前稿(「『大統領』登場で急展開見せるドイツ『大連立』交渉」2017年11月28日)で、ドイツの自由民主党(FDP)クリスティアン・リントナー党首が、オーストリア国民党のセバスティアン・クルツ党首やフランスのエマニュエル・マクロン大統領の後を追い、「中道右派の右」を票田として見定めているとの見方を紹介した。アンゲラ・メルケル首相率いるキリスト教民主社会同盟(CDU/CSU)は、元々は中道右派なのだが、メルケル政権になり左寄りの姿勢を強めてきた。これに不満を持ちつつも、極右は主張が過激すぎてついていけない、という有権者をターゲットにしていこうというもので、これも元々中道右派のFDPを更に右寄りに持っていくということである。

 このポジションが空いていることは以前から指摘されていた。メルケル首相が左寄りに舵を切った時、CDU/CSU内の保守層はこれに不満を募らせたが、この層の声を受け止める政党がこれまでなかった。本来、中道右派のFDPはそのポジションにいたはずだが、2009年、メルケル政権に連立という形で参加するうちに、FDPもメルケル首相の左寄りに引っ張られてしまった。かくて、FDPは2009年の総選挙では得票率で14.6%も獲得していたのに、2013年には4.8%にまで落ち込んだのである。FDPの伝統的支持層がそっぽを向いたのが原因である。

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