「戦争」と「戦費調達」との重要で微妙な関係

執筆者:野口悠紀雄2017年12月14日
国立銀行が発行した、日本初の紙幣 (C)時事

 

 戦争とおカネは、切っても切れない関係にある。

 おカネがなければ戦争はできない。これは当然のことだが、日露戦争のときはとくにそうだった。

 司馬遼太郎『坂の上の雲』によると、あるとき、仙台の北の気仙沼で含金率が60%という金山が発見されたとのうわさが流れた。埋蔵量は40億円だという。首相の桂太郎は、眉唾だとは思いつつ、「満州の司令部に伝えてやれ」と命じた。

 戦費があると思えば将兵の士気が上がる。戦費は大丈夫と前線に流すことによって、士卒の士気をあおろうとしたのだ。

 この知らせが満州軍総司令部に届いたとき、幕僚たちは大いに喜んだという。

 もっとも、総参謀長の児玉源太郎が満州軍総司令官大山巌に報告すると、大山は「それは桂さんの政略でしょう。落語だと思って聞いておけばよい」と聞き流したそうだ。

 戦費の約4割は外債で調達する。したがって、海外の市場がどう判断するかが、大変重要だ。負けると思われれば外債が発行できず、戦費が調達できないので実際に負ける。

 勝てば人気が上がって戦費を調達しやすくなる。

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