人気の若手講談師が本気で語る革命的芸道論

 先日「笑点」の演芸コーナーに神田松之丞が登場した。わずかな時間の中で講談という芸を説明し、そのさわりを読みたて、大喜利へ笑いを繋いだ。途中くすぐりを入れたにもかかわらず収録会場は一瞬静まりかえる。演者の迫力に押されて、観客は息を飲んでしまったのだ。

 神田松之丞は弱冠34歳の二ツ目にして、昨今もっともチケットが取れない芸人のひとりだ。

新潮社/1620円

 いまや人気絶頂の落語にくらべて講談は長らく息を潜めてきた。源平盛衰記などの堅苦しい軍記物を女流が読む、というイメージがすっかり定着してしまい、ラジオ時代の残滓のようなものになりつつあった。

 そこへ突如彗星のごとく登場したのが、まっちゃんこと神田松之丞だ。昭和30年代の落語低迷期を救った古今亭志ん朝を彷彿とさせるキレとスピード、臨場感と声量。そしてなんといっても講談師らしい男前と眼力が魅力だ。

 本書は、いつかは名人と呼ばれることになるであろう講談師と、文芸評論家にして作家でもある杉江松恋の掛け合いで構成された読み物だ。しかし、けっして安易な対談などではない。杉江の絶妙な方向付けと補足説明、そして丁寧な裏取り取材を適度に入れ込んだ、まさに講談のようなリズム感溢れる一冊に仕上がっているのだ。

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