隠然たる影響力を持ち続けるフジモリ元大統領(C)AFP=時事

 

 2017年のクリスマスイブ12月24日に発表されたアルベルト・フジモリ元大統領に恩赦を認める大統領決定が、ペルー政治を揺るがしている。

 人権侵害や汚職などの罪で25年の刑に服していたフジモリ元大統領の病状の悪化が伝えられる中、議会で絶対多数を占めるフジモリ派による不信任決議で閣僚の辞任が相次ぐなど、政権運営に苦慮していた超少数派のクチンスキ政権(与党は130議席中18議席)にとって、元大統領への恩赦はフジモリ派との関係構築からして切り札とも言え、大統領自ら、恩赦を検討すべき時期だと公言していた。

 だが他方、2年前の大統領選挙1次投票で、長女のケイコ・フジモリ候補にほぼダブルスコアの大差をつけられ、決選投票で反フジモリ感情に支えられて0.24%の僅差で辛うじて逆転勝利したペドロ・パブロ・クチンスキ大統領にとって、政権の後ろ盾であった国内の反フジモリ感情との折り合いからしても、そのカードをいついかなるタイミングで切るのかというのが問題であったはずである。

政治取引を臭わす決断

「人道的」理由から行われた恩赦だが、まさに裏取引を臭わせるタイミングで大統領令は出された。その3日前の21日には、議会においてフジモリ派主導で進められた汚職容疑でのクチンスキ大統領に対する罷免決議案が、フジモリ派の一部議員10人の造反(棄権)によって79票と、3分の2〈87票〉を獲得できず否決され、罷免を免れた直後の恩赦の発表だったからだ。前日の23日には体調の悪化からフジモリ氏が入院しており、「人道的」理由からの恩赦決定の舞台が設えられていた。

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