元日の夜、新宿発の高速バスで高知へと戻っていくディムさん。その後、失意のままベトナムに帰国することになった(筆者撮影)

 

 日本屈指の繁華街・新宿「歌舞伎町」脇にある花園神社――。穏やかに晴れ渡った元日の午後、大勢の参拝者に混じって小柄なベトナム人女性が手を合わせていた。外国人技能実習生のディムさん(22歳)である。

 2015年6月、高知県内のトマト農園で働くため来日した彼女にとって、日本で迎える3度目の正月だ。実習生は最長3年間(今後は5年間)、日本で就労できる。彼女には今年6月まで働く資格はあるが、実習先でトラブルが起き、就労期限を前にベトナムへと帰国することになった。帰国は10日後の1月10日に迫っている。その前に、ベトナムにいた頃から憧れていた東京を初めて訪れていた。

「(初詣は)高知でもお正月に行きました」

 日本での2年半で、簡単な会話ができるほどの日本語は身につけた。だが、「高知」という言葉を口にした途端、彼女の表情が曇った。

 外国人技能実習制度には、様々な問題が指摘され続けている。制度が抱える負の側面によって、犠牲となる実習生は少なくない。まさにディムさんがそうである。

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