トランプ大統領に指名され、FRB議長に就任したパウエル氏にはさっそく重大な懸念が……(C)EPA=時事

 

 その発言に世界の市場関係者は一瞬身構えた。1月のダボス会議(世界経済フォーラム年次総会)に出席したスティーブン・ムニューチン米財務長官が、「弱いドルは米国の国益」と語ったからだ。「強いドル」をモットーとしていたはずの米国が、為替政策を180度転換したのか。そんな解説も流布したが、今のトランプ米政権にそんな立派な大戦略があるはずもない。

「ボケと突っ込み」でドル安誘導

 ムニューチン氏はゴールドマン・サックス出身なので、背景に米金融界の思惑があるなどというのは、過剰な解釈というものだろう。同氏はパートナー(共同経営者)でゴールドマン・サックスをやめ、その後はエンターテインメント系の仕事に携わっているからだ。とはいえ、今回のダボス会議の米国使節団の団長を務めているから、発言にはそれなりの重みがある。

 為替市場ではムニューチン発言を受けてドル安が進み、円相場は1ドル=110円を突破した。ドル安の加速を懸念してか、翌日にはドナルド・トランプ大統領が「強いドル」を語った。ボケと突っ込みさながら、財務長官と大統領は漫才のコンビのようでもある。昨年4月にもドル相場をめぐって、よく似たやり取りが演じられた。だがその時はボケと突っ込みが逆だった。

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