北朝鮮が嘲笑しているぞ

執筆者:2008年8月号

 知り合いのアメリカ人にこんな質問をしてみた。「もし米国の西海岸あたりで北朝鮮によってアメリカ人が数十人拉致され、何十年も帰ってこなかったら、アメリカはどうする?」。「そんなの答えは決まっているよ。武力で取り戻す」。常識的でかなりリベラルな男が淡々とした表情でそういうので驚いた。 しかし考えてみるとその通りなのである。問題は北朝鮮という国家によって日本の国家主権が侵されたということである。とすれば、いかなる手段を講じてでも原状回復を図るしかない。残念ながら、日本はその手段を選ぶことはできない。北朝鮮はとっくにそのことを知っており、日本の足元を見ている。日本がいかに同盟国のアメリカにすがろうとしても、アメリカの問題ではないから、同情の姿勢は示すことはあっても、アメリカが物理的に何かをすることは絶対にない、と読みきっている。 日本は戦略を間違えた。というよりは戦略なるものがそもそも存在していなかったのかもしれない。六カ国協議の場で日本は拉致問題の解決のために他の四カ国、米国、ロシア、中国、韓国の支持と協力をあおぐ。日本は国連の制裁以外に独自の経済制裁で圧力をかけ、同時に対話を推し進める。一方で同盟国アメリカには「テロ支援国家」のリストから北朝鮮をはずしたりすることのないよう常に働きかける。

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