「無形文化遺産」登録にナポリの職人たちも喜んだが……(C)EPA=時事

 

 国連教育科学文化機関(ユネスコ)の第12回政府間委員会が昨年12月上旬、韓国・済州島で開かれ、イタリアのナポリピザなど33件が新たに「無形文化遺産」に登録された。登録が認められた各国は決定を喜び、多くのメディアもその様子を好意的に伝えていた。

 ただ、無形文化遺産の登録制度はそもそも、失われつつある祭礼行事や伝統舞踊を守るためにつくられた。ピラミッドやパルテノン神殿など「世界文化遺産」と同様に、各地の名物や名所に国際的な「お墨付き」がもらえる制度と勘違いされ、各国政府の観光客誘致策の一環として、当初想定した対象ではないような案件の登録を強力に推し、政治力を行使しようとする動きもある。創設時の理念を忘れ、登録競争だけが激化すれば、制度の存在意義さえ危うくなる。

「ピザ」も「和食」も「遺産」ではない

 イタリア政府によると、ナポリピザは16世紀ごろ誕生した。現在、ナポリでは約3000人の職人がはたらき、伝統を受け継いでいる。卓越した技術で(1)こねる(2)のばす(3)トッピングを盛りつける(4)薪窯で焼く――という4つの動作によって生み出されて初めて正統なナポリピザと認められる。

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