ソ連革命政府は紙幣増発に頼ってインフレに

執筆者:野口悠紀雄2018年2月22日
(C)AFP=時事

 

 1917年3月、ロマノフ朝ロシア帝国は、2月革命によって崩壊した。同年11月7日、10月革命によってソビエト社会主義共和国連邦が成立した。多くの人が夢見た共産主義国家が地上に出現したのだ。

 ウラジーミル・レーニンは、貨幣の廃絶を唱えていた。

 革命後の経済は、物動計画、つまり政府が策定する資源の行政的配分によって運営される。 人々は必要に応じて、必要とするものを与えられる。だから、貨幣は不要となり、労働者の天国が出現するはずであった。

 しかし、実際には革命政権はマネーを発行し続けた。それどころか、財政支出を賄うために、紙幣を増発し続けた。

 J.K.ガルブレイス『マネー』(TBSブリタニカ)によれば、1920年までには、国家予算の85%は紙幣の発行で賄われるようになっていた。

 富田俊基『国債の歴史』(東洋経済新報社)によれば、1913年初めに15億ルーブルであった紙幣残高は、1921年初めに2.3兆ルーブルになった。

 このため,インフレが発生した。

 1918年3月には、ペトログラードの労働者の賃金は1914年3月比で10倍になった。しかし、食糧の価格はほぼ80倍になった。

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