終焉間近の「メルケル12年」と「メルケル後」

執筆者:花田吉隆2018年2月22日
「立場不鮮明」と「価値中立」のメルケル流で凌いできたが……(C)EPA=時事

 

 アンゲラ・メルケル首相の「終わり」がいよいよ現実味を帯びている。

 仮に、3月4日の社会民主党(SPD)党員による投票で連立合意の支持が得られても、メルケル首相が任期4年を全うできると考える者は多くない。現に、ある世論調査では、47%もの人がメルケル首相の途中降板を予測する。昨年9月の総選挙前までは向かうところ敵なしで、ヨーロッパの自由民主主義を守る最後の砦のようですらあった。それが連立交渉のもたもたですっかり指導力を失ってしまった。連立合意でSPDに財務相ポストを持っていかれたことは、その指導力低下を何にもまして物語る。

 メルケル首相はドイツに12年間君臨した。連立政権が発足すれば、任期としてはさらにあと4年、戦後最長記録と並ぶ16年間の統治になる。その間、ドイツは何を得、何を失ったのか。メルケル後、ドイツはどこに向かうのだろうか。

神髄の1つは「立場不鮮明」

 メルケル首相は「待ちの政治家」と言われる。しかし、元からそうだったわけではない。ヘルムート・コール元首相から党首を引き継いだ時、メルケル氏は改革主義者だった。長いコール時代の中でキリスト教民主同盟(CDU)は統治能力を失った、自分はこれを改革するのだ、と意欲に燃えていた。その自信が、党首として初めて臨んだ2005年の総選挙でもろくも崩れ去る。結果は、前回の総選挙から22議席も減らす惨敗。ただ、SPDに4議席上回ったためかろうじて政権を手中にした。この経験がメルケル氏を変えた。改革主義の衣を脱ぎ捨てたのである。

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